コンプレッサーケースに加え、GMT機能も搭載したブラッドナー GMT オートマティック。
これまでに数多くの時計を吟味してきたライターの横山氏は、その独創的なスタイルに心が惹かれたと話す。
スピニカーは深海へ挑むダイバーズ時計のスタイルを原点に据えながら、多様なモデルを生み出してきた。中でもこのブラッドナー GMT オートマティックは、ケース内のベゼルが回転するコンプレッサーケースと第二・第三時間帯の時刻を読み取れるGMT機能を組み合わせ、一際の異彩を放っている。
「実はこれらの機能が誕生したのは、奇しくも同じ1955年なんです。コンプレッサーケースは生まれたばかりのダイバーズウォッチをさらに普及させる新構造として、GMT機能は世界中を旅するパイロット向け機能として開発されました。海と空、目指す世界が違っていたわけですが、半世紀以上を経てひとつの時計として巡り会ったことに、なんだか不思議で温かな想いが去来するんです」
インナーリングのデザインもまた、独創的だ。
「立体的なインデックスで表現されているのも、すごく個性的ですよね。これはミニッツスケールが描かれたブラッドナーでも同様のあしらいなのですが、GMT用の24時間スケールを用いた今作は表示部が増えたことで、立体感がさらに際立ちました。時計をさまざまな角度から眺めるたび、力強く屹立した様子を楽しめるんです」
「さらには、昼夜を分かつ2トーンカラーで彩られているのもGMTならでは醍醐味。単なる装飾ではなく、確かな意味を持ったうえでの配色ですから、説得力があります。なかでも気に入っているのが、ブルーとレッドを用いた『SP-5121-55』。GMT時計の原点といえる『ペプシカラー』で、そこにもまたヴィンテージな魅力が宿っています」
「実はこの赤と青のカラーリングは、インナーベゼルだけに施されたものではありません。秒針とGMT針であったり、フランジのミニッツスケール、文字盤の機能名表示にもあしらわれていて、全体に統一感を与えています。やや暗めのトーンにして、落ち着きのある雰囲気にまとまっているのもさすがです」
横山氏の関心は、文字盤だけでなくブレスレットにも注がれていた。
「ブレスレットは、細かなコマで構成されているところにヴィンテージな面影を感じます。特に中ゴマはビーズのような楕円で表現することで光沢感が強調されており、ダイバーズらしいたくましさとヴィンテージな洒落感が同居しているようです」
「替えベルトも標準で用意されているのもうれしいところですね。ラバーストラップならよりカジュアルな雰囲気に合わせやすいですし、水や汚れの付着も気になりにくいですから」
スピニカーのデザイン哲学が余す所なく注ぎ込まれたブラッドナーGMT。時計を知る者からも、その独創性や創造性に高い評価が集まっている。
20年以上にわたり、時計やカバン、ファッションなどモノの魅力を探求。国内外で行われた関連イベントや各地の工房を取材してきた経験をもとに、初心者にもわかりやすい切り口で時計の魅力を伝えている。